（東京から引っ越してきた人の作った京都小事典）

（平安京との）交通路 　　　　　　　　　　(INDEX：索引へ)

• 律令制下には五畿七道なる概念があった。
  • 律令制下の地方行政区画のこと。
  • 五畿とは畿内の五ヶ国。
    • 山城、大和、摂津、河内、和泉。
  • 七道（しちどう）は次のように分けられていた。
    • これら行政区画と京都を結ぶ道が逐次整備され、道（区画）が道（街道）になっていった。そしてこの道は七道駅路と呼ばれるようになった。
    • 続日本紀（大宝３年(703)の条）に「全七道に巡察使を派遣した」とあるから、この頃には「駅路」が整備されていたか。

駅路名		所属する国名（時代によって国名も変化する、ある断面（９世紀前半）で捉えた）　　　　（先頭へ）
(A)	東海道	（伊勢、志摩、伊賀）、（尾張、三河、遠江、駿河）、甲斐、（伊豆、相模）、武蔵、（常陸、下総、上総、安房）
(B)	東山道	近江、美濃、飛騨、信濃、上野、下野、陸奥、出羽
(C)	北陸道	若狭、越前、加賀、越中、能登、越後、佐渡
(D)	山陰道	丹波、丹後、但馬、因幡、伯耆、出雲、石見、隠岐
(E)	山陽道	播磨、備前、美作、備中、備後、安芸、周防、長門
(F)	南海道	紀伊、淡路、讃岐、阿波、伊予、土佐
(G)	西海道	豊前、豊後、筑前、肥後、肥前、壱岐、対馬、筑後、日向、大隅、薩摩、多祢島（大宰府を始点とする「独立した駅路」）

• 中世までの「旅日記・紀行文」
  • 七道駅路を歩いた体表的な作品は、次の５つか。
  • 「東海道、東山道」が多く出てくる。
  • 「とはずがたり」が異彩で、「山陽道、南海道」まで足を延ばしている。
  • 女人の作品も多いですから、まあなんとか旅ができるほどには整備されていた、ということでしょう。（先頭へ）

• 平安京近辺の駅路
  • 「古代交通研究会」のご努力で概ねの道筋がわかり始めた（下図に示す）。
  • まず羅城門を出て、すべての道は「京南分岐」へ向かい、そこで各地に分岐する。平安時代の交通路の出入口はすべて羅城門。
    • 「京南分岐」は、羅城門の南600ｍ（現在の十条旧千本交差点）にあった。

ＡＢ『東海道・東山道』は（近江国府を経て）「草津」で分岐 Ｃ『北陸道』は「山科」で分岐 Ｄ『山陰道』は「京南分岐」で分岐（丹波国府へ向かう） Ｅ『山陽道・南海道』は（山城国府のある）「山崎」で分岐 　　　　　『南海道』はその後、河内国府、和泉国府へ向かう （左図は「古代交通研究会」の著書「古代の道」（吉川弘文館）から引用） （先頭へ）

• 鳥羽作道・久我畷との関連（「京−山崎」間を拡大して調べてみた）
  • 「山陽道・南海道（山崎まで）」と「鳥羽作道・久我畷」との関係はあまり明快でない。
  • 「鳥羽作道」は『平安京造営に際し、羅城門から一直線に南行する計画的に作られた道』。
    • 平安時代後期に鳥羽離宮が造営されたとき、離宮への主要道として作ったとの説も多いが、吉田兼好もその説は俗説として退けている。
  • 「久我畷」も『長岡京時代からあった古代の官道』とも言われている。
    • これも真っ直ぐな道なので「自然発生した道」ではなく「計画的に作られた道」であることは間違いない。
  • これらの関係を下図に示した。

    右：巨椋池（都名所図会から、「大池」と書かれた赤▼）（先頭へ）	『山陽道・南海道』は既存の鳥羽作道・久我畷を繋いで新たな交通路にしたのではないか、と想像している。 (1)「中島」（現在の「久我橋」近く）で「当時川幅の狭かった」桂川を渡り (2)そして「久我畷」に接続し、「久我畷」をさらに延長させ （山城国府のある）「山崎」まで伸ばした。 　　　　　これが『山陽道・南海道』ではないか、と思う。 （注１）赤字の「門」＝羅城門 （注２）「長岡宮跡」の大きさは推定（未完の長岡京はもっと大きかったはず）

    
    
  • （付言）この『山陽道・南海道』とは別に、大和国府へ向かうために「東に国府連絡路」も作ったらしい。これが後の伏見街道になる。
    • 上の図では省略したが、「国府連絡路」は南下した後は、巨椋池を避けるように「一旦東に迂回して」大和へ向かうことになる。
  
  
• 淀川渡しとの関連
  • 歴史的に「淀の渡し」は有名だが、『山陽道』は淀川を渡らない。気になるので、以下「淀の渡し」について記述しておく。
  1. 山崎橋（古くは「山埼橋」と書いた）
     • 『南海道』は山埼で南へ淀川を渡る。
     • 神亀２年(725)（それ以前に尊船大徳という僧侶が「久須婆の度」に架けた橋柱を使って）行基が建造した。奈良時代のことであるから「平安京へ向かうために作った橋」ではない。
     • 延暦３年(784)「平城京から長岡京を結ぶ橋」として再度建造された。
     • 平安時代になって『南海道の橋』になった。
     • 以降、流されては再建造を繰り返し、16世紀頃再建をあきらめ、渡しに戻った。
       • それが橋本渡か。現在のJR東海道線山崎駅近くに橋本渡への道標が残っている。
  2. 与度渡（「宮ノ渡し」とも、現在の伏見区納所町）
     • 「日本三大実録」の貞観１６年(874)の条に「与度渡口」の記事がある。
     • 当時は「宇治川」は巨椋池の北岸を巻くように西進し、「与度」あたりで「桂川」に合流し、（現在の三川合流地点より北側で）淀川になっていた（上の図参照）、と推察される。したがって、この地は「淀の渡し」になっていた。
     • 当時から近くに「予杼神社」（現在の伏見区淀本町）があり、「宮ノ渡し」と呼ばれた。
     • 何のために使われたか不明。『山陽道・南海道』の「桂川渡渉（中島）ができない」ときのための「代替ルート」であったか。
  3. 草津渡（「横大路ノ渡し」とも）
     • あまり記録には出てこない。（合流点が変化しているので）現在では「淀川」ではなく「桂川渡し」になっている（現在の伏見区横大路草津町）。
     • これも各渡しの「代替ルート」か。
  • この他にも「交通路」ではなく「生活のための淀川渡し」はあったようです。

  「山崎橋」の橋寺「山崎院」跡	「山崎橋」の姿	「与度渡」にある「唐人雁木旧趾」	「草津渡」にある「魚市場遺跡碑」
  橋寺「山崎院」も行基が宝積寺の近くに建立した。山崎橋もこの近く（現在のJR東海道線山崎駅近く）にあったと思われます	鎌倉時代（関西学院所蔵、向岸＝宝積寺）	江戸時代「朝鮮通信使」が淀川（現在の桂川）から上陸した地点（京の都を通過させないため）	昔からの「草津湊」に江戸時代後期「魚市場」が公設された

  
  

  都名所図会（安永９年(1780)、国際日本文化研究センター/データベース）に描かれている淀川
  宮の渡しは「與杼神社（図では左「淀姫社）、この頃は「淀城」（図の右下隅）の対岸にあった）の鳥居前から桂川（図では縦の川）を渡って「淀小橋」（図では右下「淀川に架かる橋」）の北詰に上陸する渡し」とある。渡った淀川の河岸に唐人雁木がある	江戸時代には淀川（上の地図参照）の「三十石船」を使って「伏見−難波」間を往来する人は多くなっていた。図の「水車」は淀城に水を汲み上げるためのもの

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