（東京から引っ越してきた人の作った京都小事典）

若狭越え 　　　　　　　　　　(INDEX：索引へ)

• 【梅棹事典からの一部引用】　裏若狭街道
  • 比良山系の西にそって若狭から京都へぬける街道がある。朽木谷を南へすすみ、花折峠、途中越えをして大原にでて、八瀬を経由して京都にいたる道である。・・・この街道をはしるようにして京都にはこばれた。京都では「若狭のひと塩もの」として珍重されていた。・・・現在の国道筋ではない。八瀬から南にあるひくい横山の東の鞍部をこえ、修学院にでていたのだ。

小浜市いづみ町の商店街	桝形商店街を東に、賀茂川「出町橋」の西端
鯖街道の起点を謳う「垂れ幕、石碑」などが置いてある。「焼き鯖寿司」なども売っている。	「鯖街道口　是より洛中」の石碑が置いてある。この辺りも「鯖街道の起点（終点）」と見做しておられるようです。

• 【私説】（先頭へ）
  • 京都は海に面していないため、海産物の運搬に使う街道の整備に熱心であった。その１つが若狭湾から京都へ抜ける「若狭越え」である。鯖をはじめ多くの海産物を多く運んだ。
    • 最近は「鯖街道」と呼ばれて脚光を浴びているが、戦前に(1946年以前に)「鯖街道」と呼ばれた記録はない。
      • 最近になってマスコミその他が作り出した名称。
      • 古い記録によれば、若狭からは「烏賊」、敦賀からは「塩」、そして「鯖」は能登からの貢ぎ物の代表であった。とはいえ、これらの産物は最終的には「若狭越え」で京へ運ばれたことになる。
    • 今も国道３６７号線沿いには「鯖寿司」を売る店が繁昌している（例:花折）。
  • 梅棹事典もわざわざ「裏若狭街道」と用語を出しているように、若狭から京へ抜ける道は１本ではなかった。京都と若狭の間には山（若丹国境尾根・江若国境尾根）があるのでそこを越えなければならない。これが「若狭越え」である。自然発生的な道であるから当然、若狭越えはいくつもあるが、京は遠ても十八里と言われている。すべては列挙できないが、大筋は次の３つに分類できるようです。
    1. 水坂峠越え（先頭へ）
       • 上中−熊川−水坂峠−朽木−坊村−花折峠−途中越−大原−八瀬−修学院（約６５km≒十六里）
         • 熊川−水坂峠から今津（琵琶湖西岸）へ抜ける道は古くは「九里半越え」と呼ばれた。
         • 織田信長朝倉攻めの際の京都への撤退ルートもこの道であった可能性が大であると言われている。
       • 概ね現在の国道３６７号に相当する。
       • 現在はすべて舗装された自動車道で「若狭熊川宿」など観光化が進んでいる。最近の「鯖街道」とはこのルートを指すようだ。
         • このルートを「若狭街道」とする資料が多い。梅棹の事典もそう呼んでいる。
         • 昭文社の地図では、水坂峠から北（九里半越え（上中−熊川−水坂峠））が「若狭街道」で、水坂峠から南（−朽木−・・・−大原）は「敦賀街道」としている。
    2. 根来坂越え（先頭へ）
       • 遠敷−根来−根来坂（針畑峠）−小入谷−久多−オグロ坂峠−滝谷山−花背峠−鞍馬−賀茂（約７５km≒十九里）
         • このルートが最も古く、よく利用されたと伝えられている。江戸時代「若狭路」と言えばこのルートであったらしい。
         • 針畑峠越えとも呼ばれる。
       • この道は現在も比較的舗装されずに残っている。特に「根来坂」は古道の雰囲気がある。
         • 昭文社の地図では「小浜街道」としている。
         • とはいえ、根来坂のすぐ脇には立派な舗装林道が建設中（Ｈ１６現在）である。
       • このルートのバリエーションとしては次のものがある。
         • 木地山峠越え（朽木−木地山−木地山峠−根来）
         • クチクボ峠越え
         • 野田畑峠越え
         • 杉尾峠越え
       • 少し外れますが、根来から根来坂を山側に廻って、百里ヶ岳(931m)を越えて小入谷へ出る快適なハイキングコースがあります。健康のために偶にはこのルートもいいものです。
       
       

       １．水坂峠越えの坊村(標高305m)	２．根来坂越えの旧花背峠(標高760m)	３．知井坂越えの知井坂(標高710m)
       概ね舗装されているが、脇に入れば「昔の宿場」みたいな店もある、これは比良山荘	天狗杉西側登山口のすぐ脇にある、古道の雰囲気が残る、（現）花背峠は舗装道	八ヶ峰の近くの高いところを越えて行く。標識には「西の鯖街道とある」（「根来坂」の西にあるため）

       
       
    3. 知井坂越え（標高800mの八ヶ峰のすぐ西）（先頭へ）
       • 湯岡−久坂−知井坂−八原−弓削−山国−周山−鷹峰−紫野（約８４km≒二十一里）
       • 現在の国道１６２号に重なる部分が多い。
       • この道も概ね舗装された自動車道になっている。
         • 昭文社の地図では「周山街道」としている。
       • このルートのバリエーションとしては次のものがある。
         • 権蔵坂越え
         • 五波峠越え
         • 棚野坂越え
         • 堀越峠越え
         • 横尾峠越え
       
       
    • 因みに、小浜では昔から京は遠ても十八里と言われていた。
    
    
  • 上記の「若狭越え」の近くに、美浜、敦賀、高浜へ抜ける道もあったようです。
    • 栗柄越え（海津−美浜）
    • 七里半越え（海津−敦賀、西近江路）
    • 五里半越え（塩津−敦賀、塩津街道）
    • 尼来越え・永谷坂越え（綾部−高浜）

• 「若狭越え」の主要３ルートと想像できる“道”をカシミールの地図（東から、水坂峠越え、根来坂越え、知井坂越え）にしてみました（正確性のほどはご容赦ください）。

• 鯖寿司は京都ならどこでも食べられるが、私のお気に入りを「写真に示した」。（先頭へ）
  • この他にも「掲載した店は」
  • 「伊豫又」（錦小路通麩屋町西入ル）
  • 「末廣」（寺町通二条上ル）
  • 「いづ重」（東大路通四条上ル）

「いづう」	「満寿形屋」
花見小路の一本西の通四条上ル	「桝形通」（河原町通今出川上ル-西入ル）

• 【川柳】
  • 鯖も迷う　どの道越えて　食べられよ
  • 信長も　ひと塩もので　京還り
  • 鯖街道　曰くありげで　古語になり