（東京から引っ越してきた人の作った京都小事典）

桂川・大堰川・保津川 　　　　　　　　　　(INDEX：索引へ)

• 葛野川（かどのがわ）
  • 古くは「こう」呼ばれていた。
  • 古くは「どこからどこまで」といった五月蠅い議論は無く、（とりあえず）葛野郡を流れている川だから「葛野川」呼ばれた。

• 大堰川（おおいがわ）
  • ５世紀（後半か）嵐山付近に住む「豪族秦氏」が、氾濫抑制・灌漑のために大きな堰（せき）を作ったことから、嵐山近辺の川は「大堰川」と呼ばれるようになった。
    • 「堰」の位置は、現在も嵐山に残る堰の位置だったろうと、想定されています。

（現在の）大堰川の堰		大堰川の中流域
「堰」の下流に「渡月橋」があり、「堰」の上流側に「嵐山」が見える	「渡月橋」の上流側の「親柱」には確かに大堰川と書いてある	大堰川は「一旦日吉ダム」になって、またそこから流れ出す

• 桂川（かつらがわ）
  • 一方「葛野川」も平安時代になると、「桂」あたりの「津」（渡し、渡船の発着所）が発達してきて「桂川」と呼ばれるようになった。
  • 承和年間(834-)に空海の高弟・道昌により、渡月橋の前身となる「法輪寺橋」が架けられ、この頃から橋より上流を大堰川、下流を桂川と区分するようになった、と思われる。
  • 現在でも、昭文社の「山と高原地図」では、上記と「全く同じ区分」で取り扱っている。この区分は長く使われている。
    
    
  • ただし、明治２９年(1896)「河川法制定」により「名称は桂川」に統一されたので、公式には「全域桂川」であり、他の名前で区分することは無い。

（狭義の）桂川の開始点	（狭義の）桂川の中流域	（狭義の）桂川の終了点（近く）
「渡月橋」の下流側が「桂川の始まり」と考えている人が多い	旧交通路（久我畷）の「津」があった「現在の桂大橋」あたりの「桂川」	「与度渡」の「唐人雁木」（鳥羽街道）近く、現在はこの少し下流で「３川合流」し淀川になる

• 保津川（ほづがわ）
  • 「保津川下り」という名称はかなり一般的であり、桂川の一部を「保津川」と呼んでいるケースは散見できる。
    • 国土地理院は「河川の作用による地形」の一つに「保津峡」を挙げ、大堰川のこの区間「（保津峡の区間）を保津川と呼ぶ」とわざわざ言及している。
  • 京都府立保津峡自然公園は、保津峡を「亀岡市保津橋〜渡月橋」と規定している。
  • 以上のことから、「亀岡市保津橋〜渡月橋」を「保津川と呼ぶ」人が多くなっている。

保津川下り		国土地理院の「保津峡の区間」
「保津川下り」の乗船場。保津川の開始点あたりに相当する（保津橋のたもと）	嵐山観光で時間のある人はかなりの確率で「保津川下り」を楽しむ	確かにこの辺りを「川下り」する（from国土地理院HP）

• 桂川（大堰川）の源流
  • 最近になって「地形の全体が見えてくると」「源流はどこだ」みたいな五月蠅い議論が出てくる。
    • でも「これをやらないと議論が収まりそうもないので」「源流探し」をやってみた。
  • 源流探し
    • 京都の地形から考えて、「中央分水嶺の近く、南側」にあることは間違いない。
    • 「佐々里峠東のホラノ谷を詰めたところ（標高＝約710ｍ）」というのが定説のようです。
      • 確かに「山深く、高いところ」まで「川が遡行」している。
    • 「小野村割岳（標高＝932ｍ）の山頂近くのワサ谷」というのも「捨て難い」。
      • 小野村割岳に迫って「遡行」している点（標高＝約675ｍ）は魅力だが、国土地理院が明確に「早稲谷川」と命名しているので、桂川（大堰川）と言うのは無理がありそう。
      • さらに、国土地理院は「尾花町（下図の赤ピン）は桂川」と明記しており、「小野村割岳からの川」は「尾花町下流で合流」しているので、「桂川」と言い難い。
    • まあ定説通り「佐々里峠あたりに源を発する」というのが無難なようです。

    「桂川（大堰川）」源流地図 青色線＝桂川（大堰川） 桃色線＝早稲谷川 緑色細線＝中央分水嶺 黄色丸＝佐々里峠源流 赤色丸＝早稲谷源流 赤色ピン＝桂川（広河原尾花町）

  • その後「いくつかの川を合流」して下っていきます（以下、五月蠅くならない程度に）。
    • 早稲谷川（上述）
    • 能見川（広河原能見町で合流）
    • 寺谷川（峰定寺の前を下って来て合流）
    • 八桝川（広河原八桝町で合流）
    • 別所川（花背大布施町で合流）
    • 片波川・灰屋川（京北上黒田で合流）
    • 小塩川（京北小塩、常照皇寺近くで合流）
    • 弓削川（京北周山町で合流）
    • 細野川・明石川（京北中地で合流）
    • 中世木川（世木ダムに流れ込む、以下略）

• 【私説】（私の区分）
  • 以上の川全域が桂川であることに間違いはないのですが、歴史的謂れ・京都人の慣行などを考慮して、「３つに区分」したい。
  1. 「保津橋〜渡月橋」間は「保津川」と呼びたい。
  2. したがって「佐々里峠あたりに源を発して」「保津橋」上流までが「大堰川」となる。
  3. そして「渡月橋」下流を「桂川」と呼ぶ。勿論「淀川合流するまで」。
  • これをまとめると、下図のようになる。

「桂川」全域地図 青色線＝大堰川 橙色線＝保津川 茶色線＝桂川 緑色細線＝中央分水嶺 大堰川最上流の黄色丸＝源流 大堰川上流のピン＝左京区広河原尾花町 大堰川中流のピン＝日吉ダム 大堰川下流のピン＝大堰橋 保津川開始のピン＝保津橋 保津川終了のピン＝渡月橋 桂川終了のピン＝宇治川・木津川との合流点