88.皇嘉門院別当

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なにはえの  あしのかりねの  ひとよゆへ  みをつくしてや  こひわたるへき
難波江の あしのかりねの 一よゆへ 身をつくしてや 恋わたるべき
難波江の 蘆のかりねの 一よ故 身をつくしてや 恋わたるべき

■類似語句  身をつくして
■友札 難波がた
■歌について
藤原兼実が右大臣のときの歌合で、「旅宿に逢う恋」という題詠である。序詞・掛詞・縁語の技巧を尽くしている。刈り根の一節(よ)と、仮寝の一夜、を掛けている。
■出典
千載集恋三
■作者略歴
生没年未詳(1175の頃)。太皇太后宮亮皇太后宮亮の間違いだろう)源俊隆の娘といわれる。当時の摂政藤原兼実の歌合によく加わる。この皇嘉門院は、崇徳天皇の中宮聖子(きよこ)
【補】
仕えていた皇嘉門院の陵は月輪にある。


  • 「皇嘉門院別当」はほとんどわからない。
  • 残っているのは「和歌」のみなので、「和歌を整理」してみましょう。
    1. 「思ひ川 岩間によどむ 水茎を かき流すにも 袖は濡れけり」は「新勅撰歌集」に採られた。
      • 時期不詳。恋文を書きながら涙を流す女心を詠んだ和歌。自分の心を詠った和歌なら、「皇嘉門院別当」になった頃の和歌でしょうか。
    2. 「忍び音の 袂は色に 出でにけり 心にも似ぬ わが涙かな」は「千載集」に採られた。
      • 詞書に「摂政右大臣の時の百首歌の時」とあるから、文治2年(1186)頃の和歌と思われるが、和歌の解釈本には「治承2年(1178)5月」とある。
      • 「忍ぶ恋」の和歌。いずれにしても50歳以降に詠んだ技巧の和歌。
    3. 「嬉しきも 辛きも同じ 涙にて 逢ふ夜も袖は なほぞ乾かぬ」も「新勅撰歌集」に採られた。
      • 詞書に「後法性寺入道前関白家百首歌」とあるから、建久8年(1197)頃の和歌と思われるが、和歌の解釈本には「治承2年(1178)」とある。
      • 「初めての情事」を詠った和歌。高齢になって「初めての情事」はないだろうから、和歌読みのための和歌でしょう。若い頃「そういう経験」があったか。
      • 和歌を整理しても皇嘉門院別当の人生には近づけない
    4. 「雲もなく 凪たる空の 浅緑 虚しき色も 今ぞ知りぬる」は「続後撰集」に採られた。
      • これも、詞書に「後法性寺入道前関白家百首歌」とあるから、建久8年(1197)頃の和歌と思われるが、和歌の解釈本には「治承2年(1178)」とある。
      • 「空を見ていると“色即是空”の意味がわかる」。もう出家していた頃の和歌ですから、唯一残る「本音の和歌」。