東京から引っ越してきた人の作った京都小事典（番外：ヤマト王権）

（東京から引っ越してきた人の作った京都小事典：番外）

ヤマト王権 　　　　　　　　　　(INDEX：索引へ)

平安京に至る「日本国の成立」にも関心を持っています。
「ヤマト王権がどう推移したのか」（日頃からの調査をベースに）小林史観でまとめてみました。
多くのご批判はあると思いますが「こんな大胆な歴史の見方もあるのか」「一つの叩き台」として見ていただければ幸いです。

（王権の推移）　　　葛城王朝　　　三輪王朝　　　河内王朝　　　近江王朝　　　４王朝の比較（まとめ）

（記述に関する注意事項≒言い訳）
（１）調査内容が極めて多岐にわたるため、逐一の「参考文献・証拠史料名」は割愛した。調査・検討の経緯も割愛し、結論のみを記述しています。
（２）用語（王権、王朝、天皇、大王、・・・）・表記法（漢字、かな、カタカナ）なども難しい問題が多く、逐一悩みは多いですが、蛮勇を振るって「小林流儀」で記述しています。
（３）天皇は「（代数）天皇名」（代、名とも一般に通用しているもの）で記述した（漢風諡号は天平宝字８年(764)頃淡海三船が選定したもの）。
（４）「年」は「皇紀を西暦に換算したものでなく」大胆に「実西暦」で記述した（ここにも異論は多いと思いますが）。

葛城王朝（(1)神武-(2)綏靖-(3)安寧-(4)懿徳-(5)孝昭-(6)孝安-(7)孝霊、朝鮮系（→出雲→ヤマト→出雲）、２２０年頃から約９０年）
- スサノオ－ニギハヤヒ（＝大物主＝大国主命）（父と娘婿）は、朝鮮から海を渡って「出雲のオロチ族」を滅ぼして、砂鉄によるたたら製鉄のできる出雲を占有した。
  - この件が「スサノオの八岐大蛇（オロチ）退治」（古事記）。
- 出雲で力を蓄えた父子は東遷し、大和（磯城・葛城地方）の先住民ナガスクネヒコ（長髄彦）を滅ぼした。
  - この王朝の妃は「磯城県主の娘」が多い。
- ヤマトに王権を確立したのはニギハヤヒの娘婿となった(1)神武のとき。時は２２０年頃。
  - 日本書紀の神武元年（＝皇紀元年）＝西暦BC６６０年に従うと「天皇は長生きしなければいけなくなる」（大矛盾）。

『ヤマト王権の推移』

②三輪王朝：「三輪山」（△）の麓で執政

③河内王朝：難波（図外）で執政
　　　　　　□は古墳
　　　　　　(20)安康以降ヤマトへ

④近江王朝：(26)継体は奈良北郊（図外）で
　　　　　　徐々に飛鳥に

三輪王朝（(8)孝元-(9)開化-(10)崇神-(11)垂仁-(12)景行-(13)成務-(14)仲哀、天孫族（日向→吉備→ヤマト→滅亡）、３１０年頃から約８０年）
- 天孫族の父(8)孝元の下、日向で邪馬台国の主導者になったヒミコ－(9)開化（姉弟）は、吉備を経て東遷し、ヤマトの葛城王朝を圧迫した。
  - ヒミコ（＝倭迹迹日百襲姫命（孝元(8)の娘）、祭祀の女王）は２３９年邪馬台国を代表し「魏に朝貢」し「親魏倭王」と認めさせた。
  - その勢いに乗って東遷したが、２４８年吉備制圧中、病没した（ヤマトの箸墓に埋葬された）。
- (9)開化－(10)崇神（父子、政治・軍事の男王）は、時間をかけて葛城王朝を懐柔し、３１０年頃(10)崇神が大和（三輪地方）で王権を確立した。
  - 葛城王朝最後の王(7)孝霊は（中国同様「霊」と諡号され）「出雲大社の造営」も約束され出雲に戻った。
    - この件が「大国主の国譲り」（古事記）。
    - 「記紀」では「(8)孝元-(9)開化も即位したことにし、(8)孝元は前王朝最後の王(7)孝霊の子供」と記述し、万世一系を守ろうとしている。
  - 葛城王朝の懐柔策は、三輪大社を造って祭神を「大物主大神」にした。出雲大社の祭神も「大国主大神」。
    - 天孫族（三輪王朝）の祭神「アマテラス（天照大神）」は、(11)垂仁のとき（後に）「伊勢神宮」（になるところに）に祀られた。三輪王朝もいろいろ気を遣っている。
  - ニギハヤヒの子孫で有力豪族であった「物部」氏はヤマトに残り、三輪王朝でも豪族であり続けた。
- このように邪馬台国は九州からヤマトに移動したのだから邪馬台国論争（邪馬台国はどちらにあったか）には論争の必要はない。
- 神武も崇神も共に「ハツクニシラススメラミコト」の名を持つ。神武も崇神も共に「東遷」した。
  - 古事記は２回（２人）の東遷を合わせて「神武の東遷」と書こうとしたので、内部に矛盾を含んだものになった。
- その後、周辺国を治めようとしたがうまくいかず、(12)景行は「近江」で没、(13)成務も「近江」から離れることができなかった。
  - 古事記では「日本武尊が周辺国を治める」話が載っている。日本武尊は「近江（伊吹山）」の山の神の毒で動けなくなる（景行－成務の実態に近い）。（先頭へ）

　　　　『三輪王朝』

(11)垂仁・(12)景行は「天皇」を省略
　　　　（表示スペースの関係）

緑破線＝「記紀」の創作

河内王朝（(15)応神-(16)仁徳-(17)履中-(18)反正-(19)允恭-(20)安康-(21)雄略-(22)清寧、朝鮮系（→宇佐→難波→ヤマト→消滅）、３９０年頃から約１１７年）
- 三輪王朝が周辺国統治に苦しんでいる頃、朝鮮から渡来してきた気長足姫尊－(15)応神（母子）は北九州（宇佐地方）を席巻し、一気にヤマトに攻め込んだ。
  - 朝鮮から渡来の件が「神功皇后（気長足姫尊）の三韓征伐」（記紀）。「神功皇后（気長足姫尊）」の存在すら創作の可能性が高い。
  - この王朝も３回目の東遷をしたのだが（上の件を強調して）「記紀」には、東遷を記録していない。
- (15)応神は、(14)仲哀を滅ぼし３９０年頃ヤマト王権を簒奪、拠点を難波・河内に構えた。
  - 三輪王朝最後の王(14)仲哀を殺害した（と思う、通常なら漢風諡号に「哀」の文字は使わない）にも拘わらず、「記紀」では「(15)応神は(14)仲哀の第４皇子、気長足姫尊は(14)仲哀の妃」と万世一系を主張する。
  - 朝鮮から同道した参謀武内宿禰（蘇我氏の祖）と、難波の「大伴氏」（大伴室屋）が力を得、豪族の仲間入りを果たしている。
    - 古事記では、武内宿禰は(8)孝元の孫とし、朝鮮の人間ではないと主張している（蘇我氏擁護か）。
  - 簒奪の事情・対朝鮮対策の必要性から、暫くは「ヤマト」には入れなかった。
- 河内王朝は「対朝鮮対策」のため、しばしば中国（宋）に朝貢（倭の五王）している。
  - ４２１年倭王「讃（(17)履中）」が宋に遣使。「安東将軍倭国王」の称号を受ける。４２５年、４３０年にも。
  - ４３８年倭王「弟の珍（(18)反正）」が宋に遣使。
  - ４４３年倭王「済（(19)允恭）」が宋に遣使。４５１年には「安東将軍、使持節都督」の称号を受ける。
  - ４７８年倭王「武（(21)雄略）」が宋に上表文。４７９年には「鎮東大将軍」の称号を受ける。
- 遣宋使によって対朝鮮対策が漸く落ち着き、(20)安康が「石上」、(21)雄略が「泊瀬」、(22)清寧が「磐余」とやっと「ヤマト」に入れるようになった。
- 仲哀の殺害に始まってこの王朝は粗暴が多く、(20)安康は謀殺した大草香皇子の子に暗殺されるという始末。(21)雄略も継承ライバルの皇子を次々と粛清した。その結果、(22)清寧に子が無かったとき跡継ぎの近親者探しに苦労する。
  - (23)顕宗・(24)仁賢は「播磨」に隠れ住んでいるのを見つけて即位させたが、共に短在位だった。(25)武烈は歴代でも例を見ない程の「残虐非道」で子も無く亡くなった。
  - これらは次の王朝の正当性を認めさせるための創作で(23)顕宗・(24)仁賢・(25)武烈は実在しなかった（と思う）。（先頭へ）

　　　　『河内王朝』

赤取消線＝(21)雄略の粛清

青取消線＝(20)安康の謀殺

紫取消線＝(20)安康の流刑（先で自害）

緑破線＝＝「記紀」の創作

近江王朝（(26)継体-(27)安閑-(28)宣化-(29)欽明----、蝦夷系（？→越→ヤマト→混交）、５０７年から）
- ヤマトが後継者を探しているとの声を聞いて、越の豪族(26)継体は「我は応神の五世孫なり」と声を上げた。
  - この件は、万世一系に拘る「記紀」の創作か、(26)継体の詐称か、のいずれかであろう。
  - (26)継体は「越」以前の出自不明。ここでは「蝦夷出身」としたが、よくわからない。
- (26)継体は、息子の「(27)安閑・(28)宣化」を引き連れて、「樟葉宮」（河内）に入って即位した。これが５０７年。
  - これを迎えたのが、（大連）大伴金村、物部麁鹿火、（大臣）巨勢男人（後の蘇我氏）。この頃「豪族体制」が固まった（と思われる）。
  - (26)継体はなおも慎重に歩を進め、５１１年「筒城宮」、５１８年「弟国宮」（山背）に入り、ヤマト「磐余」に入ったのは５２６年である。
- このままスンナリいくかと思われたが、(26)継体の後継は難航した。
  - (26)継体の体制が安定するまで時間がかかったので、息子達も高齢化し(27)安閑・(28)宣化は即位しなかったと思われる。
  - (26)継体は体制安定化のため、ヤマト（河内王朝）の血筋の女性を迎え(29)欽明をもうけた。この女性が誰かは不明。(24)仁賢すら創作と思われるので手白香皇女というのも万世一系に拘る「記紀」の創作と考えるのが筋だと思う。
- (26)継体没（５３１年）(29)欽明が跡を継いだ。(26)継体-(29)欽明が現在の天皇家の祖（蝦夷・朝鮮の混血、それ以前は「万世一系」ではない）と考えます。（先頭へ）
  - (32)崇峻は蘇我馬子に暗殺された。大王を殺害した蘇我氏の権力は一層肥大化していった。
  - 政治の中心が飛鳥に遷るの（飛鳥時代の始まり）は、(33)推古女帝が豊浦宮（現・向原寺）で即位した時（５９２年）からである。
  - 現在「天皇陵」として「治定が確実視されている」のは(31)用明、(33)推古が最も初期の天皇である。それ以前の天皇は「陵墓も明確でない」。
  - 聖徳太子という名称は天平勝宝３年(751)編纂の「懐風藻」が初出。厩戸皇子は６０５年に「斑鳩」に隠棲しているので、「記紀」の書かれている業績はどこまでが事実かは不明。

　　　　『近江王朝』

(26)継体以外は「天皇」を省略

青破線＝＝即位は「記紀」の創作

緑破線＝＝人名は「記紀」の創作

赤取消線＝蘇我馬子の暗殺

紫破線＝＝業績は「記紀」の創作

４王朝の比較（まとめ）

４王朝を大胆に計数的に比較して、本ページをまとめる（かなり乱暴すぎるかもしれない。ご容赦ください）。

王朝	成立年	存続年数	代数	平均在位年数	民族の概要	補足説明
葛　城	２２０年	９０年	７	１２．８	朝鮮　＋　＜出雲、磯城葛城＞	(1)神武以降の６代は（あまり）分析・推論できていない
三　輪	３１０年	８０年	７	１１．４	天孫（日向）　＋　＜葛城＞	吉備も吸収されているかも
河　内	３９０年	１１７年	８	１４．６	朝鮮　　　＋　＜難波河内＞	「(23)顕宗-(24)仁賢-(25)武烈」は創作（代数にカウントしない）
近　江	５０７年	８５年	７	１２．１	越（蝦夷）　＋　＜ヤマト＞	ヤマト＝既にこの頃は（過去の王朝の）民族が混交していた

在位年数が特異な大王（天皇）もいるので、これを取り除くと、次の表が得られる。平均在位年数の分析としてはこの表の方が理にかなっている。（先頭へ）

王朝	成立年	存続年数	代数	平均在位年数	民族の概要	特異な大王（天皇）に関する説明
葛　城	２２０年	９０年	７	１２．８	朝鮮　＋　＜出雲、磯城葛城＞	（分析不足で）創作の大王が混入しているかもしれない
三　輪	３１０年	８０年	＊５	１６．０	天孫（日向）　＋　＜葛城＞	王権確立（310年）以前の「(8)孝元-(9)開化」をカウントから外す
河　内	３９０年	１１７年	８	１４．６	朝鮮　　　＋　＜難波河内＞	（創作の）「(23)顕宗-(24)仁賢-(25)武烈」をカウントから外す（上表でも）
近　江	５０７年	８５年	＊５	１７．０	越（蝦夷）　＋　＜ヤマト＞	（即位しなかった）「(27)安閑-(28)宣化」をカウントから外す

表の説明
- 成立年：かなり大胆に推論し西暦で表記した（すべて「紀元後」、（上に記述した）頃を（計算のため）無視した）。
- 存続年数：（切れ目はあるはずですが）王朝の切れ目はないとして、単純計算している（後続王朝成立年　－　当王朝成立年）。
- 代数：大王（天皇）の代数。下の表で「＊」が付いているのは、在位年数が特異な大王（天皇）を除いた数。
- 平均在位年数：これも単純計算している（存続年数　÷　代数）。
- 民族の概要：「主体（征服）民族　＋　＜従属（制圧・吸収された）民族＞」　の形で、かなり大胆に表記した（細かな部分では、もっと多くの民族が関係しているはずですが）。
  - 民族名（例：出雲、天孫、・・・）も「その先（先祖民族）」があるはずですが、その分析・推論はできていない。
- 近江王朝：（比較のため）(26)継体-(27)安閑-(28)宣化-(29)欽明-(30)敏達-(31)用明-(32)崇峻-(33)推古（即位）までとし、計算した（推古在位３０年は含まない）。